サステナビリティ

木材調達に対する考え方|植林について

森つくりからはじめる紙づくり

植林の背景

紙の原料となる「木材」は、太陽の恵み(光合成)によって増やすことの出来る再生可能な優れた資源です。このため、収穫したら更新するといったサイクルを循環させることにより持続可能な森林経営を行うことが出来ます。製紙産業は「使う原料は自分で作る」、「森林資源を循環させながら持続的に利用する」といった観点から、原料の安定確保を目的とした植林活動を世界各国で積極的に展開しています。海外における植林事業は1970年代に始まりましたが、特に1990年代からは活発化し、今では7カ国で18ものプロジェクト(図「製紙業界の海外植林」参照)が進行しています。2023年末時点での植林した面積は、国内(14万ha)も合わせると約52万haになりますが、これを2030年度までに65万haまで拡大していく方針です。京都議定書(1997年)以降、森林の持つ優れたCO2吸収固定能力が評価されており、原料の安定的な確保に環境貢献の意味合いも加わり、植林は益々重要度を増してきました。

海外植林について

日本の製紙各社は原料確保のため、古くから国内で社有林の保有や植林を進めてきましたが、国土の6割以上を森林が占める日本では、新たに造成出来る土地の確保やコストの問題もあり、植林する場を海外へ求めました。

オーストラリア
ベトナム

海外で植林を実施するメリットとしては、比較的まとまった土地を確保しやすいこと、平坦な土地も多く作業の効率化が図れること、コスト面、成長の早い樹木が育つことなどが挙げられます。また、海外での植林事業は、地元の人々の雇用機会の創出や社会基盤の整備など、地元地域に密着した社会貢献といった側面もあります。

製紙業界の海外植林

適切なサイクルで更新

植林は、牧草地、牧場跡地、灌木地、荒廃地などの利用度の低い土地に、その地域の特性も考慮して、ユーカリやアカシアなどの繊維が多く、製紙に適した成長の早い早成樹を植えています。
例えば8年で成木になる樹種では、土地を8区画に区分し、毎年違う場所に植林をして行きます。8年後には初めに植えた樹木を収穫し、その跡地に再植林や萌芽更新します。こうして計画的に育種→植林→保育・管理→伐採・・・・のサイクルを繰り返すことで、毎年一定量の収穫が得られると同時に、植林地には同じ大きさの森林が持続的に形成されます。(表1参照)

表1 主な植林樹種
広葉樹
ユーカリEucalyptフトモモ科
ユーカリ属
約600種あるとされるが、オーストラリアを原産とするものが多い。早成樹。印刷・情報用紙など
アカシアAcaciaマメ科
ネムノキ亜科
アカシア属
早成樹。
印刷・情報用紙など
針葉樹
ラジアータ・
パイン
Radiata pineマツ科
マツ属
新聞・印刷用紙など
コラム 植林された森林は地球温暖化に貢献

植物は、光合成により二酸化炭素を吸収し体に蓄えます。一方、呼吸によって二酸化炭素を排出します。植物が生長するということは、二酸化炭素の吸収量が排出量を上回るということです。つまり、成長がほぼ停止している成木より成長を続けている若木の方が二酸化炭素の吸収能力が高いのです。植林地には、この若木が常にたくさんあり、地球温暖化の一因となる二酸化炭素の削減に貢献しています。

コラム 樹木の可能性を引き出す

植林事業をより効率的に進めるには、成長が早く、繊維質が多いなど、製紙に適した樹木の開発が重要です。すでに製紙各社では、植林地の気候風土に適合した樹木を選抜育種する方法や組織培養などによって優良な苗を作っているほか、繊維の含有量を高める研究やリグニンの生成を抑制する研究などを進めています。また、病虫害に強い樹種や、耐寒性、耐乾燥性、耐酸性、塩害に強い樹種の研究にも力を注いでいます。実用化されれば、これまで木が育たなかった場所にも森林が広がることになります。