おすすめのタグ

第5期nestが日本製紙連合会と探る、紙の未来とサステナビリティ その他

2026.06.11

サステナブルな未来の担い手となる若者が集うサステナブル・ブランド ジャパンのユースコミュニティ「nest」。第5期となる2026年度の5月定例会は、日本製紙連合会を共創パートナーに迎え、「めぐる紙から、つづく暮らしを考える」をテーマに開催された。

この日は東京都北区の「紙の博物館」を訪れ、紙の歴史やリサイクルの仕組みを体感。後半は場所を移し、日本製紙連合会の専門家陣から紙の環境貢献に関するレクチャーを受けた上で、未来の社会変化を見据えた紙の役割について議論した。身近な素材である紙を通じて、循環型社会の在り方に挑む次世代たちの姿をレポートする。

紙の歴史と現在地を体感

JR王子駅を降りてすぐの飛鳥山公園内に位置する「紙の博物館」。和紙や洋紙を問わず、古今東西の紙に関する資料を幅広く展示する、世界でも数少ない紙専門の総合博物館だ。

フィールドワークに参加したメンバーたちは、館内を巡りながら紙と日本の文化・産業の成り立ちについて学んだ。近代日本の製紙産業の礎を築いた工場でも使われていた「ボロ蒸煮釜」などの産業遺産や、紙の大量生産を可能にした世界最初の「抄紙機(しょうしき)」の模型を見学。さらに、古紙のリサイクル工程など、サステナビリティが重要視される現代ならではの展示にも着目した。暮らしを支える紙がどのようなプロセスで作られ、循環していくのかを五感で学ぶ貴重なインプットの場となった。

「紙は環境貢献素材」

午後からは北区滝野川会館へと場所を移し、オンライン参加のメンバーも交えたハイブリッド形式でのレクチャーとワークショップがスタートした。

レクチャー冒頭、日本製紙連合会の秋山民夫常務理事は「今日は、紙について皆さんが誤解しているかもしれない点を解きほぐし、何か一つでも持ち帰ってほしい」と期待を込めた。秋山氏は「紙を使うことは森林破壊につながる、というイメージを持つ人もいるかもしれない。しかし実際には、紙は適切に管理された持続可能な森林資源から作られる『環境貢献素材』だ」と語りかけ、データに基づいて解説した。

また、社会全体で進むペーパーレスの動きについても言及。教育現場でのデジタル化にも触れ、「スウェーデンやフィンランドでは、学習への影響を考慮してデジタル教科書から紙の教科書へ回帰する動きもある。デジタル一辺倒ではなく、用途に応じた使い分けが重要」と、情報伝達における紙の普遍的な価値を力説した。

質疑応答では、メンバーの課題意識が鋭く交差した。 ある学生から「プラスチックの代替として紙製品が増えているが、紙の消費量が増えすぎることへの懸念はないのか?」と質問が飛ぶと、専門家陣は「大切なのは、使った後にしっかり回収してリサイクルすること。日本が誇る高い古紙回収率と循環システムを維持・向上させることが今後の鍵になる」と応答。企業と若者が真正面から向き合う、白熱した意見交換となった。

未来の社会変化から、紙の新たな価値を描く

ワークショップでは「未来の社会を想像し、紙の使い方の変化を考える」のテーマで、さらに視座を高めた。気候変動に伴う環境や暮らしの変化を起点に、今の紙の使い方が未来ではどう変わるのかを等身大の視点で議論した。

各チームの発表では、次世代ならではの柔軟なアイデアが次々と飛び出した。あるメンバーは、パンフレットやルーズリーフのデジタル化を見据えつつ、大学生活のリアルな変化を語った。「生成AIが進化し、オンラインのレポート課題だとみんなAIを使ってしまう。そのため、逆に提出を紙指定にする教授が大学にいる。産業が進化するからこそ、逆に紙に戻るということも今後増えるのではないか」

別のチームは、前回の4月定例会で出た「暑くなると人が外に出なくなる」という前提からネットスーパーの普及を予想。「毎回段ボールが運ばれてくるとかさむので、家庭側で専用のコンテナを用意できたらいい。また、箱に送り先の伝票を貼るとごみが増えるので、段ボール自体に宛先を直接印刷できる技術があればいいのではないか」と、物流の無駄を減らす具体的な提案を行った。

また、この日学んだ内容から「シュレッダーで紙を裁断すると繊維が短くなり、再利用できる寿命が縮むのでは」と仮説を立てたメンバーは、「機密情報を処理する際、文字のインクだけを消して紙を切らずにそのまま再利用する技術が必要では」と提案。この他、「アルバムや航空券のように、自分の経験を残しておきたいものは紙の需要が続くはず」と、デジタル時代における紙の情緒的価値を再評価する声も多かった。

今回のインプットと議論を経て、日本製紙連合会とのコラボレーションはさらに続く。7月には、愛知県春日井市にある王子製紙春日井工場と王子ネピア名古屋工場へ実際に足を運び、製造の最前線を視察する予定。現場のスケールや最新技術を目の当たりにすることで、メンバーたちの問いはさらに深く磨かれていくはずだ。

社会の課題を自らの問いとして引き受け、企業とともに具体的なアイデアへと練り上げていくnestの探究が本格化していく。

タグ一覧