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「紙の未来サステナユースフォーラム」開催レポート【後編】 その他

2026.05.07

前記事に引き続き、2026年3月13日(金)開催の「紙の未来サステナユースフォーラム」の模様をレポートします。

Paper Positive――グループ②「パンフレットの見直し提案」

小学生向けパンフレットをブラッシュアップ

紙の製造工程が見えにくいと指摘

グループ②のテーマは「パンフレットの見直し提案」。日本製紙連合会の小学生向けパンフレット『ペーパー君と巡るPaper World』を見直し、大学生向けに再構築するというものです。元パンフレットは、製紙産業における原料調達・製造工程・環境への取り組みを、低年齢層にも理解しやすくまとめた内容です。

グループでは紙へのネガティブなイメージを解消するため、「紙は環境によくないという偏見を解消する」「紙は再生可能な資源である」点をアピールする方針を決定。日本製紙連合会へのヒアリングとグループディスカッションで、ネガティブイメージが生じている原因を洗い出しました。

そこで浮かび上がったのは「紙の消費と森林破壊が結びつけられている背景には、生産工程への理解不足がある」という考察です。原材料と生産品に意識が向く一方、「製造」プロセスが十分に認識されていないことが誤解の原因と整理し、そこの解像度を上げる方針を固めました。

こうした考察を踏まえ、パンフレット全4ページの構成は「問題提起→回答」の流れで情報を提示。紙へのネガティブイメージ解消を最優先しつつ、「電子機器や他素材と対立させない」「持続可能性や循環の視点を強調する」といった方針のもと、読みやすく前向きな誌面作りを進めていきました。

新パンフレットのタイトルは「Paper Positive」。大学生の興味をひくため、表紙にはあえて誤解に基づく疑問を記載し、続くページでその回答を提示します。内側の見開き上段には、紙についての誤解を示す図版を2点配置。1点で紙の製造、もう1点で紙の利用に関するイメージを示し、見開き下段に原材料から生産、再生に至るプロセスを紹介。紙への誤解を解きながら、その循環性も強く伝える構成になっています。

さらに裏表紙ではポジティブな情報を提示するため、セルロースナノファイバーなど最先端技術も紹介。関連資料のURL、日本製紙連合会のQRコードなども記載する構成です。

最後に「課題やメッセージ性を意識したことでコンセプトがぶれなかった」と成果を振り返るとともに、「元パンフレットに比べて製造工程の具体性には課題が残る」と改善点にも言及。「多くの人に読んでもらい、その反応を今後に活かしたい」と展望を述べ、発表を締めくくりました。

終了後の「見開きのイメージ図が印象的だった。具体的な制作手順を知りたい」との質問には、「まずフォーマットを作り、そこに肉付けする方向で制作を進めた」と説明。質疑応答の中では「パンフレットが完成したら本来のターゲットである大学生だけでなく、中高生にも手に取ってほしい」という期待も語られました。

共感から理解へつなげるSNS戦略――グループ③「SNSによる広報プラン提案」

SNS広報プランチーム

SNSの使い分けについて提言

グループ③のテーマは「SNSによる広報プラン提案」。大学生を中心とした若年層に響く、SNSを活用した新しい情報発信プランの検討・提案です。

グループでは、紙への関心層が利用するSNSと紙に対する認識を把握し、興味・関心に寄り添うプランを作成するというアプローチを選択しました。

日本のSNS利用者が約9600万人、特に10~20代では利用率が90%以上にのぼるというデータを踏まえ、グループはInstagramとX(旧Twitter)に着目しました。Instagramを写真やリール動画で情報を発信できる「視覚的に魅力を伝えるSNS」、Xは短い文章でリアルタイムに情報を拡散できる「情報を早く拡散するSNS」と分析。紙の特長を発信するには、Instagramで使い方や魅力を視覚的に紹介し、その情報をXで共有することで、より多くの人に広く届けることが可能になると考察しました。

さらにグループは大学生だけでなく、紙の専門商社・株式会社竹尾による展示スペース「見本帖本店」(東京都・神田)に来場された方を対象にアンケート調査を実施。日常的な利用比率はYouTubeやInstagramが高いのに対し、情報収集ではXのタイムライン利用率が高まるという結果を得ました。また、紙に対するイメージでは、一般学生が「記憶や記録に残りやすい」という実用・学習面に価値を見出す一方、クリエイターは「繊細で丁寧に扱わなければいけない素材」「温かみ・自然を感じる」といった感性的な価値を重視する傾向があり、両者のギャップが明らかになりました。

これらの前提から提案されたのは、InstagramとXを併用する情報発信プランです。Instagramで紙の使い方や魅力を視覚的に伝え、Xで拡散と参加型のエピソード募集を行うことで、共感の広がりを生み出す設計としました。

その際に用いるコンセプトワードとして、「人と人が繋がるから紙が活きる」「人を温かく包みます」という例を提示。紙に関するキーワードから共感・理解を深め、紙の材質や製造工程にまで興味を広げていけるのではないかと提案しました。

質疑応答ではアンケートの実施方法、母数を問う指摘もありましたが、詳細な数字を挙げて補足。「具体的な投稿コンテンツを知りたい」という質問に対しては、「最初から環境問題を出しても興味を惹くのは難しい。まず第一歩として手紙用紙の特徴や差異を紹介し、材質の違いが生じる理由に興味を持ってもらい、そこから生産工程や紙の知見に連鎖させたい」と意図を説明しました。

紙の未来へ向けて――総評とクロージング

秋山常務理事から総評が述べられた

小川理事長からも質問

全グループの発表後、日本製紙連合会・秋山民夫常務理事が総評を述べました。
「みなさんがわれわれの目的を理解し、学生本来の生活がある中、発表につなげてくれたことを大変うれしく思います。中間報告会では心配になる部分もありましたが、ブラッシュアップされた発表内容は大変満足できるものでした。みなさんのアイデアがこれからの広報活動につなげられると確信しています。
今後、製紙産業に直接携わる方は少ないかもしれません。ただ、ワークショップで得た『紙の真実』をいろいろな場所で伝えてくれれば、理解者は20人が40人、40人が80人と増え、本当の姿が広まってくると思います。この半年間、ありがとうございました」

また、全体の質疑応答では日本製紙連合会・小川恒弘理事長から「記憶媒体としての紙への親密度は、今の大学生とそれ以下の世代で違う実感はあるか」という問いが投げかけられました。それに学生たちは「情報はデジタル、思いは紙という使い分けは、下の世代でもあまり変わらない」「記憶に刻みたいときに手を使うのは、どの世代も同じだと思う」と回答。デジタル化が進む一方、若い世代にもメディアの特性を活かした使い分けが根付いている様子がうかがえました。

そして半年以上に及ぶワークショップの締めくくりとして、参加者全員を「紙の未来サステナユースアンバサダー」に認定。小川理事長から一人一人に認定証が手渡され、盛会のうちに幕を閉じました。

参加者にワークショップの印象を尋ねたところ、意識の変化や発表への手応えを口々に語ってくれました。

「紙に対する意識が変わり、分別なども意識して行うようになった」
「メンバーそれぞれの視点が異なる中、話し合いで共通のゴールを見つけられたことが、最も価値のある時間だった」
「人に考えを伝える方法を試行錯誤してきたが、そこに向き合った経験は社会人になっても生きていくと思う」
「伝えることの難しさと楽しさを同時に学べた。『多角的に物事を見る力』を大事にしていきたい」

本ワークショップが将来につながる糧になったという発言もあり、参加者一人一人に確かな変化を残しました。日本製紙連合会は今後も、こうした紙の未来につながる歩みを続けていきます。